「手がかからない子ほど要注意」「いい子症候群」が怖い理由と、その防止法
今、OA中のラジオでも取り上げているテーマだが、文字に起こしておこう。
親の立場からすると、自分の子どもには「いい子」になってほしいと思うもの。
ところが、一見いい子に見えるのに、心に大きな問題を抱えている子どもたちもいる。
それが、親など他人の顔色ばかり伺って自己決定できない「いい子症候群」の子どもたち。
いい子症候群にはどんな問題があり、どうすれば我が子がいい子症候群になることを防ぐことができるのか。
「いい子症候群」の原因は、親の子どもとのかかわり方にある
みなさんは、「いい子症候群」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
「いい子」というからには、悪くないどころか、いいことのように思うかもしれない。
でも、いい子症候群の子どもたちの場合、必要以上にいい子であろうとする傾向がある。
その大きな特徴としては、自分を抑えて周囲の人の期待に過剰に応えようとする、
いま風にいえば、空気を読もうとするあまりに、自分というものがわからなくなっているということが挙げられる。
いい子症候群の子どもたちの典型的な行動例を挙げてみよう。
家族と一緒に食事に出かけたとする。
ふつうの子どもであれば、たまの外食で、何を食べようかと大いに興奮している場面。
でも、いい子症候群の子どもたちは、自分がなにを食べたいのかということすらわからない。
なぜかというと、なにを食べたいといったら親がよろこぶのかというようなことばかり考えるように、小さいときから強いられてきたから。
つまり、子どもをいい子症候群にさせてしまう最大の要因は、親の子どもとのかかわり方にある。
子どもが子ども自身の気持ちに従って行動できるようなかかわり方をしていないのだ。
そういう親も、一見すると子どもに対して理解があるようなかかわり方をしていることも少なくない。
たとえば、子どもが高校や大学などの進路を選ぶというとき、そういう親はまずはこういうはず。
「あなたが好きな学校に行っていいのよ」と。
でも、子どもがいざ自分の志望校を口にしたら、
「でも、その学校だとこういうところが心配だな」
「お母さんはこの学校がいいと思うな」というふうにいってしまう。
それでは、子どもからすれば、自分の行きたい学校に行っていいとはとても思えない。
そして、「親の気持ちに応えないと……」と考えるようになる。
もちろん、そういう場面で子どもが自分の気持ちに従って反発するケースもある。
頭ごなしに「そんな学校は駄目! こっちにしなさい!」なんていわれれば、子どもも反発しやすいだろう。
でも、先に述べたように、いい子症候群を引き起こす親は、「あなたのためを思っていっているのよ」という態度を取りますから、子どもからすれば反発しづらくもある。
そうして、子どもたちはいい子症候群になっていく。
ここまで、私が例に挙げた親の口調が気になった人も多いかも知れない。
そう、いい子症候群を引き起こす親は、圧倒的に母親が多い。
加えて、いい子症候群になる子どもには女の子が多いという特徴もある。
男の子に対しては、最初から良い意味で両親ともに諦めている。
「男なんてなるようになる」「好きに生きろ」というように。
でも、女の子の場合はちがう。父親からすれば異性のことはわからないし、性のちがいを尊重しないといけないという意識が働くのでまだ問題は起きない。
ところが母親は、「娘は自分のコピーのようなもの」だという認識をするケースが多い。
「自分がこう思うのだから、娘もこう思うにちがいない」「娘の幸せは、こういうものにちがいない」と、娘だけは自分の期待に応えさせてかまわない存在だと思い込んでしまう。
そうして、親である自分の希望を娘に最優先させるような言動をしてしまう。
いい子症候群の子どもは「アダルトチルドレン」になる
いい子症候群が怖いのは、いい子症候群の子どもたちの多くが、いい子症候群であることに無自覚だという点。
わたしが過去に会った女性を例にしよう。
彼女は、母親からこんな言葉をかけられ続けて育った。
「お母さんは英語をきちんと習いたかったから、あなたにはそうしてほしい」
「お母さんは、本当は学校の先生になりたかったから、あなたにはそうなってほしい」
「そうするのが、あなたにとってもいいことだと思うよ」と。
彼女は、母親の期待にしっかり応えて英語の教師になった。
そして、それが母親のためにやってきたことなんて思うこともなかったし、自分にとっての幸せだと信じて疑うこともなかった。
ところが、35歳くらいになったときに、突然、「わたしの人生って誰のものなのか」「わたしの人生は空っぽじゃないのか」という思いに襲われて、心が不安定になった。
彼女はもう30代だったので、厳密にいえばいい子症候群とはいえない。
いい子症候群の子どもは、大人になったときに、「アダルトチルドレン」と呼ばれるようになる。
アダルトチルドレンとは、子どもの頃に自分らしくさせてもらえない体験を重ねることで、大人になってからも、生きづらさを抱えてしまう大人のこと。
アダルトチルドレンの人たちはたくさんの問題を抱えている。
先に例に挙げた女性のように、人生自体に空虚感を持ってしまうこともそう。
また、職場や家庭などの人間関係においても多くの壁にぶつかる。
自分がなにをどうしたいのかということがわからないため、「わたしはこうしたい」という交渉ができない。
そうして、我慢に我慢を重ねて不満を限界までため込んだ揚げ句に、「わたしを大事にしてくれない!」と怒りを爆発させるということになる。
でも、相手からすれば、自分のことをなにもいわない人の気持ちなんてわかりようがないかも知れない。
子どもに「空気を破る」練習をさせる
先に、いい子症候群の特徴として、周囲の空気を過剰に読もうとすると述べた。
そう考えると、子どもをいい子症候群にしないためには、子どもに空気を破る練習をさせればいい。
わかりやすい例なら、先にも挙げた外食の場面など最適だろう。
親の希望など関係なく、子ども自身に自分が食べたいものを真っ先に選ばせてあげればいい。
このとき、親の顔色を伺うような素振りを子どもが見せていたとしたら、危険信号と考えていいと思う。
いい子症候群の子どもは、親からすれば親のことを考えてくれて、反発もしてこないし、まさにいい子に思えるだろう。
でも、手がかからないいい子というのは、のちのちに手がかかる人間になりやすい。
「なにを食べればいいかな?」というふうな、指示待ちの言動を子どもがするようなら、いい子症候群の兆候が見えたら、要注意!
そして、子どもが自分で決められるまで、親は辛抱強く待とう。
ここに、欧米と日本の大きな違いがある。
パン屋さんでの親子の振る舞いを見ていると、欧米人と日本人のちがいがはっきり感じられる。
欧米人の親の場合、「なにを食べたい?」と子どもに聞いたら、子どもが自分で決められるまでずっと待つ。
欧米には、たとえ相手が子どもであっても、自己決定を大切にする習慣があるからだ。
ところが、日本人の親は待てない。
「じゃ、これにしとこうか」「これ好きだよね、これでいいよね?」と、親が決めて押しつけてしまう。
子どもをいい子症候群にしないため、日本人の親にもっとも必要なものは、何よりも根気、「待つ力」ではないだろうか。
暮れの元気なご挨拶。
本年も大変お世話になりました。
たくさんの方々に目を通して頂き、心より感謝申し上げます。
少しでも、皆様の挑戦、心の安定、24時間営業の子育ての参考になれば幸いです。
2022年もフル回転で更新していきますので、どうぞよろしくお願い申しあげます。
一緒に頑張りましょう。