「子どもの “やり抜く力” の育て方」(後半)
GRITを伸ばす重要な要素
「興味」「練習」「目的」「希望」
その意味は、“興味を持ったことを反復練習することにより目的を達成する努力をする。途中失敗しても希望を失わず前に進む。”これがGRITを伸ばすための基本行動だ。当たり前のことのように感じるが、常に意識しておくことが、実行につながる。
そして、GRITを育む上で鍵となるのは、「努力と報酬の関連性は学習することができる」ということである。
これはヒューストン大学の心理学者であるロバート・アイゼンバーガー氏が研究のすえ、導き出した結果だ。
つまり、「努力した結果、いいことが起こる」という成功体験の積み重ねがさらなるモチベーションを招き、努力を継続する力を生み続ける。しかもそのハードルは高ければ高いほど効果大。
GRITを育む行動
では、具体的にどうすればGRITを高めることができるのか。
【1】ダックワース家が実践した4つのルール
前述のダックワース准教授が自分のお子さんに実践していたルール。
・家族全員(親も)ひとつは “ハードなこと” に挑戦する
・“ハードなこと” は自分で選ぶ
・“ハードなこと” は変えてもいい
・高校生になったら、“ハードなこと” を2年間は続けなければならない
難しいことには練習が必要。運動、音楽、ダンスなど何でもいいが、自分で選ぶことが大事。まだ小さいうちは色々と模索する時期なので何をやるかは変えてもOKだが、ある程度成長した後は、持続性を重視して2年間という長期間続ける訓練をさせる。
ただし、小さいときでも、やることを変えるときはタームなどの区切りがつくまでは続けさせ、「つらいから明日からやめる」というのは認めなかった。
実際、娘さんはそうやっていろいろやった末に、ヴィオラという没頭できるものをついに見つけた。
ここで重要なポイントは、親も自分の目標を持って一緒にやること。親の行動をお手本に子どもも学んでいく。
【2】能力は筋力と同じ。“目標を設定してクリアする” 訓練を繰り返して鍛える
目的(志)は強力なモチベーションの源となる。
ダックワース准教授が作ったGRITスケールでは「目的」スコアが高い人ほどやり抜く力が強いことがわかった。
そして、目標を定める際に大切なのは、「何のために」を考えること。なぜその目標を達成したいのかがわかっていると行動の意義が生まれる。
それが自分の軸になって情熱と粘り強さが培われる。漠然とやらされるのとは全く違う結果が待っている。
まずは小さいことから始めてみる。例えば、「今週は本を1冊読みきる」「今週中に逆上がりができるように練習する」など。
そして、なぜそうする必要があるのかを考えるとき、「週末に会うおばあちゃんに報告して喜ばせてあげたいから」とする。
そこまで考えて頑張った結果としておばあちゃんが嬉しそうに褒めてくれることで、子どもはより大きな達成感と満足感を得ることができる。それが次のモチベーションにつながる。
自分の枠を超えて人や世の中のための目的を持つと、GRITはさらに伸びる。将来に備え、子どもの頃から小さな目標クリアを繰り返して能力を鍛えておく。
【3】伝記を読む
目的を持つために効果的なのがロールモデルを持つこと。
そのために、偉人たちの伝記を読むことはとても有効だ。成功した人たちがいかに苦労して努力したかを知ることは子どもの脳裏に刻まれ、さまざまなジャンルの人の話を読むことで自分の興味を探ることにもなる。偉人だけでなく、親自身の体験談も積極的に話してあげるといい。
【4】結果ではなく努力を褒める
親として気をつけたいことを最後にひとつ。コロンビア大学のミューラー教授たちの研究で、「頭がいいね」と持ち前の能力を褒めると子どもの学習意欲が下がることがわかっている。結果よりも「頑張ったなあ」と努力したことを認めてあげることが粘り強さを育てることにつながる。
GRITとは、簡単に諦めない情熱と粘り強さ、同じことを繰り返せる我慢強さ。考えてみれば、「努力」「忍耐」は昔から日本の教育で重要視されてきたこと。そのためGRITと日本人の相性はいいと言われている。
イチロー選手はその代表格。
「特別なことをするために特別なことをするのではない。特別なことをするために普段通りの当たり前のことをする」
この彼の言葉には多くの真理が含まれている。当たり前のことを続ける大切さと難しさ、大人にとっても改めて考えさせられる課題である。
明日できることは今日できる。
明日はラジオ収録なんで、また明後日。