「あずぶろ。」

僕の頭の中。時々、僕が好きなもの。

「電車内の風景〜素晴らしい女子高生に出会った話〜」

「電車内の風景〜素晴らしい女子高生に出会った話〜」

 

少し前、電車に乗っていた時のこと。

 

小さい男の子を連れた30代くらいの母親が電車に乗って来た。

 

母親はスマホを夢中で触り、子どもが電車内で騒いだり暴れても注意すらしない。

 

この時点で乗り合わせていた、周囲の乗客はイライラ。

 

さらに、子どもが座席に靴のまま跳び乗って、ジャンプするエスカレートぶりにも、

 

母親はスマホをいじったまま、「うるさい」と軽く言うだけ。

 

誰が最初にキレるか、という緊張状態の中、近くに座っていた女子高生が立ち上がった。

 

そして、その親子に近づくとニコニコした笑顔で、

 

「ねえ、僕。ここは僕のおうちじゃなくて、皆の場所だから静かにしようね」と優しい口調で注意した。

 

即座に、母親が「ちょっとあなた何なん?」

 

ようやくスマホをやめて、女子高生に食ってかかるも女子高生はスルー。

 

「靴のまま椅子に乗ってるけど、これやったら椅子が汚れてしまうやんな?

 

 汚れた椅子に座ったら、服も汚れてしまうよ。僕も服汚れたら嫌じゃない?」

 

子供は「・・・いやや」

 

「そうやんな、嫌やんな!ほな、どうしたらええか分かる?」

 

笑顔のまま優しい言葉で諭す女子高生に、男の子は大人しく座席から下りた。

 

「そう、良く分かりましたー!僕は何歳?」

 

「ごさい!」

 

「そっか五歳か!ほな、もうお兄ちゃんやな。僕はもうお兄ちゃんなんやら、かっこよくしてないとあかんやん。

 

 赤ちゃんみたいに、バタバタしていたらかっこ悪いやん。かっこ悪くてええの?」

 

「いやや!かっこええ方が良い」

 

「そやな。かっこええ方が良いやんな。ほな、皆の場所では静かにしよか。

 

 挨拶をちゃんとする。好き嫌いせんとしっかり食べる。

 

 この3つがちゃんと出来たら、僕もかっこええお兄ちゃんになれるで。出来る?」

 

「出来る!」

 

「よし、じゃあ約束!」

 

という感じで、あれよあれよと男の子を静かにさせてしまった。

 

 

本当に見事な子どもの扱いに感心していたら、彼女のすごい所はここからだった。

 

次は母親に向き直った。

 

「失礼ですですけど、あなたはこの子の母親ですよね?

 

 母親なら自分の子どもに、最低限の躾(しつけ)くらいしたらどうですか?」

 

「は?何なん!ガキが調子乗って口出してるんちゃうで!」

 

顔を真っ赤にして母親がわめいた。

 

「そのガキに非常識を指摘されてる、アンタは少なくともガキ以下やねんけど!」

 

自分は少子化に貢献してるだの、意味不明な言い訳を色々まくしたてるが、片っ端から女子高生に鼻で笑われている。

 

「何が少子化対策や。無計画にポンポン産むだけやったら、犬でもできるわ。産んだ子どもをちゃんとしつけて、

 

一般常識を身につけさせて、一人前の人間に育て上げる事が親の仕事なんちゃうん。ガキがガキを産むなや!」

 

言葉にする人こそいなかったが、車内の空気は完全に女子高生に同調。

 

言い返せなくて居たたまれなくなったのか、母親は男の子を連れて次の駅で逃げるように降りていった。

 

母親が叱りつけられていたのに、男の子が降りざまに女子高生に手を振っており、

 

女子高生も笑顔で手を振っていたのが印象的だった。

 

 

母親に対する言葉遣いは、多少乱暴だったかも知れないが、

 

男の子を優しく諭す笑顔と、母親に注意する表情と、

 

親子が降りた後に連れの男子高校生と会話する照れた表情のギャップが、

 

とても素晴らしい女子生徒だった。

 

 

知っている高校の制服を着用していたので、私は帰り道、その高校の生徒指導担当の先生に、そっと状況報告だけしておいた。

 

「名前も学年も分かりませんが、素晴らしい女子生徒さんに出会いました。

 

表彰状モンでした。この話を、私の勤務する学校でもさせて頂きますね。」と。

 

明日は華金

では、また明日。