「あずぶろ。」

僕の頭の中。時々、僕が好きなもの。

「他人のこと考えたらどうだ」

「他人のこと考えたらどうだ」

 

昔、電車で帰省していた時の話。

 

 結構まんべんなく人が座っているくらいの乗車率で、私は優先席付近に立っていたの

だが、貧血を起こしてしまい床にしゃがみこんだ。

 

 すると、優先席に座っていた老夫婦のおじいさんが席を譲ってくれた。

 

 私も最初は遠慮したが、

「わしは健康だけどアンタ具合悪そうだし、優先席はジジババの為だけのもんじゃない

よ」と言って下さったし、おばあさんのほうも勧めて下さったので座らせてもらった。

 

 貧血が回復したら立つか移動しようと思いながら。

 

 しばらく座っていたら、とある停車駅でおばちゃん二人が乗ってきた。

 

 そのおばちゃん、暫く席を探して車内をうろついていたが、生憎満席だったらしくド

アの方に戻ってきた。

 そしてドア付近に立ったまま喋り出したのだがその内容が丸聞こえ。

 

「あの子、老人立たせて座ってるわよ」

「私たちだって立ってるのにねぇ」

「これだから最近の若い子は……」

と完全に私に文句を言っている。

 

 なんかいたたまれなくなって立とうとするも、まだ具合が悪くて立てそうにない。

 

 私の様子に気付いたおばあさんが、

「いいのよ気にしないで」と言って下さるものの肩身の狭い思いをしていたら、おじい

さんがキレた。

 

 おじいさんはそのおばちゃん二人に歩み寄って行って、

 

「確かにあの子は若いが、具合が悪いからわしが席を譲ったんだ。

 あんたら見た所座らなきゃいけないようなトシでも身体でもないだろうが。

 悪口言ってる暇があったら少し他人のこと考えたらどうだ」

 

 と穏やかだが、説得力のある口調で窘めた。

 

 おばちゃん二人、最初は呆然とおじいさんを見ていたが、結局コソコソと車両を移っ

ていった。

 

 戻ってきたおじいさんは、私に

「あんなの気にする必要ないからね」

と朗らかに笑っていた。

 

こんな人と結婚できたおばあさんは幸せだと思った。

 

街にあふれる「何でやねん」シリーズ

①ノーコメントで。

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また、明日。